津市芸濃町椋本の内科、糖尿病内科、消化器内科|赤塚クリニック

「このへっぴり腰め!」【2012.12月】

院長より 
 
私が医師10年目頃に勤務中のある病院で胃バリウム検査の写真を多人数で検討している時のことです。メンバーの最上級医が意見をまとめてレポートを作成しますが、上の先生はいつも検査の7割くらいを要精密検査としていることを「へっぴり腰」と思っていました。年上の先生なのでもちろん面と向かって言うことはありません。 
 
 
患者さんは胃内視鏡を受けるのが嫌で、半日を費やしてバリウムを飲んでいるのです。その7割を「要精密検査」と判定することはあんまりだと思います。 
しかも、この「要精密検査」として胃内視鏡を行った患者さんに癌が見つかったことは勤務していた2年間で1例もありませんでした。その時のメンバーによっては私が最上級医となる場合もありますが、私の「要精密検査」は1・2割だったと思います。その写真に積極的に癌を疑う所見がなければ、「異常なし」と判定するからです。早期胃癌の中には胃バリウム検査で見つけられないものもあり、実際には癌が存在していても「異常なし」の判定になることは承知の上です。以後転勤となり、専門分野も糖尿病内科に変更したので、胃バリウム検査の判定に関するストレスからは解放されました。 
 
ところが、現在行っている肺がん検診の胸部Xpで、呼吸器内科専門の先生が「要精密検査」と判定する割合は従来1・2%だったのですが、今年は7・8%に増えました。しかも、「要精密検査」と判定する内容が実に軽微な所見ばかりです。またもや呼吸器内科専門の先生に同様の思いを抱きました。しかし、患者さんとしては胸部CTを撮る手間や費用がかかっても、より高いレベルの安心の方が大切だと考える方が多いと思います。今の患者ニーズは医師の「英断」ではなく、「安心」なのだと考えさせられました。私自身も「英断」から「安心」への「へっぴり腰」に変化しつつあります。